技術概要/
次世代映像
メディアテクノロジーの最先端:8K解像度、120fps ハイフレームレート、HDR、ワイドカラーガンマ、VR、360°ビデオ
「より優れた品質」 に対するユーザー要求は、ディスプレイ技術・演算性能・ネットワーク・ストレージ・ビデオコーデックの技術進歩と相まって、ここ数年の動画品質の継続的な向上に繋がってきました。
HD (High Definition) 動画は2000年代後半にSD(Standard Definition)動画を上回りました。 HDは現在、放送、VoD、Blu-rayディスクなどの数多くの分野で普及しています。メディア業界では現在、HDからUltra-HD(UHD)と呼ばれる新しい世代の映像システムに移行しています。
UHD動画には、フルHD (FHD)よりも高い解像度(4Kや8K)とともに、ハイダイナミックレンジ(HDR)・ハイフレームレート(HFR)、ワイドカラーガンマ(WCG)・高ビット深度といった品質向上が含まれますが、これらの要素の組み合わせはより強い現実感とはるかに没入感のある体験をもたらします。
What Next Generation video offers you
超高解像度:4K、8K、さらにはそれ以上
UHDは、より大きな視野角(Field of View, FoV)を覆うと同時に、より高いピクセル密度を提供し、より細やかに映像を表示することで、より没入感のある体験を提供できます。
8K(UHD-2またはスーパーハイビジョン, SHV)は、FHDよりも16倍高解像度 (=4K UHDよりも4倍高い解像度) によって、4Kでも実現不可能な没入感・没頭体験を実現します。
一部のアプリケーション、特に次世代のVRや360°ビデオなどのアプリケーションでは、FoV全体を高品質映像でカバーするために、12Kや16Kなどの、8Kを超える解像度が必要とされています。
8Kには4Kでもなしえない、没入感と魅惑的体験をもたらします。
ハイダイナミックレンジ
ダイナミックレンジは、画像の最も明るい領域と最も暗い領域との間の比率です。(カンデラ/平方メートル( cd / m2)の最大および最小輝度) ダイナミックレンジはしばしば”stop” で測定され、各stopは輝度強度の2倍化に相当します。
HD動画システムにおける標準ダイナミックレンジ(SDR)は、10stopのダイナミックレンジを持ちます。 自然のシーンには最大で50stopものダイナミックレンジが含まれますが、人間の目が同時に捉えることのできるダイナミックレンジはだいたい17stopです。現行のHDシステムは、人間の目が知覚するよりはるかに低いコントラストとなっていますが HDR動画システムでは、少なくとも16stopのコントラストとなります。
HDRによって、画像にコントラストの詳細を追加したり、暗い領域と明るい領域どちらにおいても鮮明な画像を表示したり、ハイライトをよりよく表現できます。 それらの結果として、HDRビデオは、より自然な画像を生成し、より鮮明な知覚をもたらします。
HDRでは、暗い領域とハイライトを含む明るい領域で鮮明な画像を得ることができ、より鮮明な知覚をもたらします。
ワイドカラーガンマ
ワイドカラーガンマ(wide color gamut, WCG)は、映像中で表現できる色域を拡張します。 現在の世代のHD動画システムでは、人間の目が認識できる色域よりも少ない色しか表現できません。
UHDビデオでは、次世代色域であるBT.2020色域を使用するように定義されていますが、これは現在のHDTVで使用されているBT.709規格の能力をはるかに超えるものです。 BT.2020はかなり過酷な要件ですので、これがディスプレイ業界において完全に組み込まれるまでにはまだまだ時間が必要です。一方、 デジタルシネマアプリケーション向けに定義されたDCI-P3カラースペースは、BT.709とBT.2020の中間ステップとしてかなり一般的になってきています。
WCGには少なくとも10ビット映像が必要とされ、適正なレンダリングのための適切なメタデータを設定する必要があります。
WCGは表現できる色を現在のHDTVの能力をはるかに超えた色域まで拡張します。
ハイフレームレート
解像度がFHDからUHD-4KやUHD-8Kに増加するに従い、動画像での精細度を維持するためにはフレームレートもまた増加させなければなりません。 高速に動くコンテンツやカメラの動きを伴う映像コンテンツの場合、滑らかな動きを表現し、動きの早い領域も詳細に表示し、かつ動きに関連した映像の乱れを最小限に抑えるためにはハイフレームレート(High Frame Rate, HFR)が非常に重要な要素となります。
60Hzから120Hzへフレームレートを二倍にすると、非圧縮データレートでは必然的に倍増しますが、高度な動画圧縮を使用すると、データレートは20〜30%の増加にとどまります。
高速に動くオブジェクトまたはカメラの動きを伴うビデオコンテンツの場合、HFRは滑らかな動きを表現するために極めて重要です。
VRと360°映像
これまで、HDやUHD、Cinemascope、IMAXなど様々な技術を用いた、ユーザーがメディア中に完全に入り込むという没入体験が企図されてきました。 今日のVRデバイスの出現により、コンテンツ製作者は実際の利用者に対して本当の没入体験を配信する新たな機会を得ました。
新型VRコンテンツは没入型コンテンツとして認知されていますが、納得力のある、潜在的に革新的な没入体験を提供するためには、その体験の質を大幅に向上する必要があります。
映像品質を向上させる要素として以下:
- 解像度, 視野角, 画素密度: いくつかの業界予測によれば、納得感のある没入型VR体験のためには最低限8Kが必要であり、真のVR体験のためには16K×16Kが必要です。 360°VR動画・画像においては、FoVの3倍または4倍の解像度が必要となるためです。 FoVが100°から200°の間では、デバイスの解像度が高くなるほどピクセル密度の向上と、シャープな映像表示が得られます。
- フレームレート: ユーザーがコンテンツの周囲を移動できることを考慮すると、従来のTVシステムに輪をかけて、HFRが重要です。真のVRモーション表現には最大240fpsものフレームレートが必要です。
第一世代の VR (4K) | 現状の VR (8K) | “True VR” (16K) |
|
---|---|---|---|
片目当たりの解像度 [px] | 1024 x 1024 | 2048 x 2048 | 4096 x 4096 |
全体の解像度 [px] | 4096 x 2048 | 8192 x 8192 | 16384 x 16384 |
フレームレート [Hz] | 30/60 | 60/120 | 240 |
モノラル/ステレオ | モノラル | ステレオ | ステレオ |
ビット深度 | 8ビット | 10ビット | 12ビット |
ビデオコーデック | H.264 | HEVC | 次世代コーデック |
オーディオ | ステレオ | スペーシャル | 次世代スペーシャル |
新型VRコンテンツは没入型コンテンツとして認知されていますが、より納得感のある、潜在的に革新的な没入型体験を提供するためには、体験の質を大幅に向上する必要があります。
映像データレート
次世代ビデオの重要な課題は、その巨大なデータレートです。 下の表は、主要な要件下でのHD、UHD-4K、およびUHD-8Kについて、非圧縮コンテンツとHEVCコンテンツの関連データレートをまとめたものです。
HD | UHD-4K | UHD-8K | VR 16K | |
---|---|---|---|---|
Resolution [px] | 1920x1080 | 3840x2160 | 7680x4320 | 15360x15360 |
Frame rate [frames/s] | 30 | 60 | 120 | 240 |
Color format | 4:2:0 | 4:2:0 | 4:2:0 | 4:4:4 |
Bit depth | 8-bit | 10-bit | 10-bit | 12-bit |
Uncompressed bitrate [Mbps] | 747 | 7,500 | 60,000 | 849,400 |
HEVC Compressed bitrate [Mbps] | 5 | 25 | 120 | 900 |
Compression ratio | 150X | 300X | 600X | 900X |
非圧縮UHDビデオのデータ保存、伝送、再生は非常に複雑で高価です。 上記の表で提案されているような、実際のデータレートを達成するためには、500倍以上の圧縮比が必要です。 ビデオコーデックは非常に高い圧縮効率を実現するのみでなく、圧縮時の生成ノイズがUHD環境でより顕著となることを考慮した超高画質を維持する必要があります。
非圧縮UHDビデオのデータ保存、伝送、再生は非常に複雑で高価です。
現在、ビデオ配信用の最も普及しているビデオコーデックの1つは、H.264 / AVCですが、 2013年には、HEVC / H.265と呼ばれるビデオコーディングの新しい国際規格が定義され、H.264 / AVCと同じ品質レートの条件下で50%優れた圧縮効率を提供します。
参照:規格および技術資料
- Ultra HD Forum
Ultra HD Forum. “Ultra HD Forum: Phase A Guidelines” Dec 2016
- UHD Phase 1
DVB. “Specification for the use of Video and Audio Coding in Broadcasting Applications based on the MPEG-2 Transport Stream”. DVB A157. Nov 2016”
- 8K Super Hi Vision
ARIB.“Video Coding, Audio Coding and Multiplexing Specifications for Digital Broadcasting”. STD-B32. V 3.9. Dec 2016
- PQ transfer function for HDR10
SMPTE. SMPTE ST 2084, “High Dynamic Range Electro-Optical Transfer Function of Mastering Reference Displays”
- Metadata for HDR10.
SMPTE. SMPTE ST 2086, “Mastering Display Color Volume Metadata Supporting High Luminance and Wide Color Gamut Images”
- HLG Standard: ARIB
ARIB. “Essential Parameter Values for the Extended Image Dynamic Range Television System for Programme Production”. ARIB STD-B67”.
- HLG Standard
ITU. “Recommendation ITU-R BT.2100. Image parameter values for high dynamic range television for use in production and international programme exchange”, June 2017.
- WCG Parameters for UHD TV systems
ITU. “Recommendation ITU-R BT.2020-2. Parameter values for ultra-high definition television systems for production and international programme exchange”. Oct 2015.